先日、後継者もいて、お金もあるのに廃業された会社の話を聞きました。廃業の原因は職人がいなくなってしまったことです。その会社の経営者は齢70前後で、職人もまたその世代だったようです。また社長は職人ではなかったので、仕事を受けても自社でできず、外に出すにしても単価が安すぎてどの業者にも引き受けてもらえず、実質事業が継続できないので廃業されたということでした。
事業承継というと、社長から後継者への代表権の交代や、後継者の経営者教育、自社株対策や債務整理などの財務的な対策などが事業承継の課題として一般的なセミナーや情報誌のテーマに挙げられることが多いですが、人や技術の承継についても十分考えておく必要があると思います。
中小企業の多くは優秀な方を採用できなくて苦労されています。ということは、技術を習得するにはそれなりに時間を要することになります。今の技術を後任の社員にもし継承するとするなら、一体どれほどの時間を要するのでしょうか?また、今在籍している職人はあと何年働いてくれるのでしょうか。技術が高ければ高いほど付加価値は高いですが、その分、技術の承継に時間を要することになります。
また、そうした社員を雇用するにはそれなりに生活の保証として給与を支払う必要があります。70前後の人の給与とこれから雇用しようとする例えば30台~50代の人の給与では大きな開きがあると思います。そうすると会社はそうした人を雇用できるだけの収益体制になっている必要があります。
長年の不況で同業他社の廃業・倒産していく中で、取引先から見て御社の技術が他社に代えがたいものであれば、事情を説明し積極的に単価交渉することをオススメします。また、外注先が廃業して新たな外注先を探している取引先もこの時代少なからず存在しますので、そうした新たな取引先を開拓し、適正価格で交渉する準備を整えておくとより良いと思います。
このように色々と考えるとそれなりの時間を要することが想像できます。技術の承継も合わせてその時間はざっと10年ぐらいはかかるのではないでしょうか。これは一大事業と呼べると思います。この技術継承をすすめる事業を社長と後継者が共に考え、実行していくことも事業継承にとって大切なことだと思います。
なお、蛇足ではありますが、弊社では適正単価の算出や、取引先の単価交渉資料の作成、また技術承継ほか事業承継のご相談にも応じることができますので、お気軽にご相談ください。